ベトナム視察研修報告書

11月5日から10日迄、県議会の視察でベトナムを訪れました。

目的は
①日本商品の流通状況
②県内企業の進出状況
③ベトナムにおける日本語人材の育成状況等です。

私の知るベトナムは
①世界で有数の親日国である
②アセアンで著しい成長を遂げている
③多くの日本企業が進出していることです。

日本そして自治体は人口減少社会にあって生き残り策を海外に求めています。今回の訪問を通じて現状の確認と将来に繋がるヒントを得たように思います。

ホーチミンの一コマ

ベトナム統一会堂


11月6日 チャコジにて


 日本の人口が減り続ける中、あらゆる職場で人手不足が深刻化し、外国人労働者に頼る職種が増えています。今月から技能実習適正化法が施行され、実習期間の延長と対象職種に介護職が新たに追加されました。一部の受け入れ先の低賃金や劣悪な労働環境が失踪に繋がるといったことも時折報じられます。とはいえ今後外国人労働力の依存が高まるであろう我が国は、これまで以上にしっかりした送り出しと受け入れが不可欠になります。

 そこで訪れたのがチャコジ(人材送り出し機関)です。こちらは技能実習生に対して6ヶ月以上にわたり日本の生活や日本人の考え方を理解させて実習に対する高い適応力を身につけさせ、実習生の日本語の能力や専門技術を高める事業を行っています。責任者に事業説明を受けたあと質疑応答、その後教室で生徒さんと交流しましたが、皆さんの清々しく初々しい態度に心を打たれたのでした。

【質疑応答を終えて】
①チャコジは各都道府県に受け入れる組合と受け入れ企業が存在する。もちろん本人の希望の職種を聞いた上で受け入れ先を見つけて派遣している。
②期間終了後、実習生はベトナムに帰国したあと、チャコジが日系企業はじめ技能を活かした職種に斡旋している。
③中国を抜いて今や日本への技能実習生の派遣国第1位となったベトナムでチャコジの派遣で失踪した生徒は僅か1%にとどまっている。その背景には地域を限定した呼びかけ、政府、地方自治体、銀行、家族の連携が大きな要因とみられる。実習生の日本への派遣ルートには様々あるが、今後送り出し機関の選別をより強化する必要がありそうだ。

【まとめ】
 現在日本は労働力不足を技能実習制度で補っているが、今後期限を7年、10年と緩和せざるを得ない局面が早晩訪れるであろう。その時ベトナムが経済成長を遂げていた場合、日本の労働の最先端の現場でどんなことが起きるか予め予測しておく必要がある。話では幸いベトナムの実習生の多くは期限さえなければまだまだ日本で働きたいとの思いを持っているそうだ。そろそろ日本も技能実習というタテマエを卒業して共存共栄を真剣に考える必要がありそうだ。

11月7日 ベトナム法人視察

オルガンニードルベトナム

オルガンニードルベトナム


ジェトロ事務所


 玉名郡玉東町にある九州オルガン針のベトナム法人を訪問します。九州オルガン針は長野県のオルガン針(株)が1970年に県の誘致で玉東町に進出しました。「1本の針に心を込めて世界の顧客に手渡そう」の社是の下、蓄音機、オルガン、ミシンの針製造を原点に今では医療、電子、アパレル等の精密部品の金属加工を手がけています。1995年にベトナムに設立されたオルガンニードルベトナムは1447人の従業員で九州工場の前工程をしています。説明後工場内を見学しましたが、細かい作業は器用なベトナムの皆さんの得意とするところです。また平均年齢32.2歳の製造現場には活気が漲っていました。一方で共産党の社会主義国で工場を運営する不安や懸念が言葉の端々から伺えたのでした…。

 午後ジェトロ事務所を訪れます。私たちはメディアで海外展開で成功を収めた企業を目にします。しかしその原動力、支えになっているのがジェトロです。今ベトナムはタイに続いて日本企業の進出が著しい状況にあります。職員からベトナムの・政治経済概況・外国投資の現状・ベトナムの競争力の比較・ベトナムのこれから等を分かりやすく教えていただきました。最後の訪問は熊本市に本店を持つ富田薬品ホーチミン駐在所です。富田薬品は昭和23年設立、医薬品卸企業として1,200億円の売り上げを誇る大企業です。平均年齢が30歳の若いベトナムで医薬品卸企業がなぜゆえ進出したのか興味深いところでした。社員の方の説明では人口が多いこともさることながら、若年人口が多いことはこれから高齢化が進み罹患者も増えることが予想される。また子供達は食の欧米化、運動不足で肥満化も進んでいるようで医薬品関連の事業としては将来性がある市場だそうです。

【まとめ】
 ベトナムへの進出はそれぞれ違うものの背景には少子高齢化による市場の縮小、賃金の上昇による人件費の高騰等、グローバル社会で勝ち抜くための手段によるものでした。ベトナムは社会主義とはいえ比較的政情が安定していることや基礎教育の充実、何よりも若い労働力があることが進出理由のようです。日本企業の進出は今一服した感がありますが、親日国のベトナムの立場は今暫くは揺らくことはないでしょう。

11月8日 ハノイにて

JICA事務所


 滞在していた経済の街ホーチミンからベトナムの首都ハノイに移動します。到着後JICAベトナム事務所を訪れます。JICAは発展登場国への技術協力、資金協力を主な業務とする外務省所轄の「国際協力機構」です。ODAも賛否両論ありますが、今回訪れたベトナムはじめ多くの国では、地下鉄や橋が完成した時は日本の資金協力云々といった説明書きを目にします。日本の経験や知見を、世界の貧困削減や経済成長に活用できれば、日本の存在感は高まります。JICAの橋渡しで熊本県のJICA事業採択企業とASEAN諸国が緊密な関係を構築しています。こうした事業をさらに拡大、展開していくことがASEAN諸国との距離をより身近にすることになります。その後熊本出身の社長が経営する日本テレソフトが協力するベトナム盲人協会トレーニングセンターを訪れました。こちらは8月に最新にICTを備えた視覚障がい者に対するPC技能習得コースが開設されました。今後施設で学んだ障がい者の皆さんの教育向上、就業に大きく寄与することでしょう。

【まとめ】
 JICAの果たしている役割は私たちが想像している以上のものがあると思います。一例を挙げると、最近日本への海外の旅行客が増加傾向にあります。確かに円安も大きな要因の1つですが、私が考えるに日本に好意的な思いを持つ途上国の人々が増えているからです。その好意的な思いを持つ大きなきっかけになっているのがJICAのODAではないでしょうか。今回JICAも他の団体との熾烈な競争があることを初めて知りました。ODAを通して途上国はもちろん、お互いに良好な関係ができるように最先端で是非これからも頑張っていただきたいものです。

 盲人協会トレーニングセンターでは熊本出身の金子社長の日本テレソフトがいかにベトナムの目に障がいのある皆さんと強い絆を築いているか認識しました。JICAを通じたこの事業が今後芽を出し、つぼみがつき、花を開き、ベトナムとの交流の輪が益々拡大していくことでしょう。

11月9日 視察研修最終日

ハノイ職業工業専門学校

ゴウシ・ダンロン


ゴウシ・ダンロンの光景


 研修の最終日、ハノイ職業工業専門学校を視察します。ここは熊本工業専門学校と繋がりがあります。理事長からベトナムとの付き合いがあるとは聞いていましたが、まさかこんなに深い関係とは思いませんでした。お互いが交換留学することでそれぞれの国を見つめ直すことはとても大事なことです。知識や技術は日本が優れているかもしれませんが、向上心、やる気、熱意といったものはベトナムの方が勝っているかもしれません。若い生徒同士で切磋琢磨しながら更なる高みを目指していただきたいものです!

 昼食会の後、合志技研工業の現地法人ゴウシ・タンロンを訪問します。合志技研は本田技研工業の子会社の八千代工業のそのまた子会社です。こちらに来て驚くのはバイクの多さです!言葉で表現することも難しく、まるで『押し寄せる津波』のようです。今ベトナムは日本で例えるなら1970年代位の経済規模だそうです。ASEAN諸国ではまだまだバイクの需要は増す傾向にあります。経済成長の途上でバイクは庶民の足として最も活躍しています。そんな中にあってゴウシ・タンロンの役割はますます大きくなることでしょう。熊本から現地に派遣された職員の方々から文化や風習の違い、人事管理の難しさ等を伺ったのでした。

視察研修を終えて

 11月5日から9日まで連日中身の濃い研修でした。今回は熊本県と所縁のある企業や現地法人を訪れました。記載したようにそれぞれが日本人としての誇りを持って働いていらしたことが強く印象に残りました。また今回ベトナムという親日国に来て自国ファーストではなく、お互いが助け合うことの大切さを改めて痛感しました。この度の研修の成果をこれからの私自身の活動にもしっかり活かしていきたいと思います。

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